熊本地震、阿蘇山噴火の可能性は?川内原発を止めるべきなのか考えたい
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原発止めれば安全になるのか。
本当に九州は電力が足りないのか。
福島原発のように事故を起こす危険性は本当にあるのか。
原発関連の話題は、デマや憶測が飛び交いすぐに政権批判や原発利権などの問題に結び付けられ、「知らない人は口を出すな」という雰囲気になりがちな印象です。
今回はそういうのは取りあえず置いておいて、「熊本で地震起きたけど川内原発って今大丈夫なの?」という疑問が湧いたので、まとめておきたいと思います。
付け焼刃の知識なので、間違いや過剰な表現などあるかもしれません。ご指摘頂けたらありがたいです。よくわからないという人のために、出来る限りわかりやすく書いていきたいと思います。
再稼働した川内原発は停止するべきか
熊本地震から続いている余震で川内原発を止めてほしいという声も大きくなっているようです。
原子力発電所の運転に反対する弁護士の団体が、19日に原子力規制委員会を訪れ、全国で唯一稼働している鹿児島県の川内原発を速やかに停止させるよう求めました。
「脱原発弁護団全国連絡会」などが川内原発停止の申し入れをしたそうです。
この署名は36時間で3万人を超えたそうです。ツイッターやフェイスブック上でも原発停止を求める声は大きくなっているようですが、規制庁はいまのところ止める必要はないというコメントを残しています。
熊本では今も余震が続いており、今後も大きな地震が来ないとは限りません。
では今すぐ川内原発を止めるべきでしょうか。ここで、川内原発を稼働させ続けることによるリスクと、川内原発を停止させるデメリットについてまとめてみたいと思います。
川内原発稼働の自然災害リスク
規制庁は「想定外の事象は起きておらず、今のところ運転を止める必要はないと考えている」とコメントしています。
川内原発では地震の可能性はないといえるのでしょうか。そして万が一の時でも本当に安全といえるのでしょうか。
今回の地震について安全性は問題ない
4月16日に熊本で起きた地震では、川内原発を停止させる必要がないという発表がありました。
その後の19日午後5時52分ごろには、熊本県八代市で震度5強を観測するマグニチュード(M)5・5の地震が発生しています。これらの地震について川内原発の耐震性については問題がないのでしょうか。
通常、建物の耐震性を検討する指標としては、ガルという単位が用いられます。
ガル(Gal)は地震の揺れの強さを表すのに用いる加速度の単位のことです。1ガルは毎秒1cmの割合で速度が増す事(加速度)を示しています。地震の揺れは、地面に水平に縦、横(南北、東西方向)と上下方向の3方向で解析されますが、近年ではこれらすべてを合成して算出されたものを最大加速度としています。
980ガルは1G(地球重力)となります。
川内原発は620ガルの加速度を想定して設計されており、今回の地震で測定された地震動は最大で12.6ガルとなっていますので、基準値を大幅に下回ることを理由にあげています。
川内原発直近での大地震発生
インターネット上では、この画像が拡散されているようですが、川内原発の近くの断層について危険性はないのでしょうか。
出典:イメージ6 - 中央構造線と南海トラフと慶長大地震 伊方を中心とした四国九州版の画像 - 民族学伝承ひろいあげ辞典 - Yahoo!ブログ
こちらの断層の詳細図を探してみると産業技術研究所の活断層データベースでは川内原発からは少しずれているようです。この川内原発西部へと伸びる活断層「日奈久断層帯」についても地震も確認されています。
日奈久断層帯 気象庁「ほかの地域でもリスク」 | NHKニュース
直近ではないものの活断層は存在していますので、地震が起こらないとは限りません。実際に1997年の3月26日と5月13日には、川内市で震度6の地震(鹿児島県北西部地震)が起きています。
5月13日に川内市内では震度6弱を観測、川内原発は通常可動を続けていましたが、当時の地震では地震応答観測装置のデータによると639ガルを計測していました。当時1台のみ設置されていた地震計によると水平方向に71ガルが計測されていましたが自動停止装置は作動せず通常運転を継続していました。
現在の計測状況についてはわかりませんが、以前には基準を超える地震で非常停止されていなかったという事実については覚えておいた方がいいのかもしれません。
今回の熊本地震での安全性について、地盤の面から考慮しても安全ということを九州電力では発表しています。
地震での阿蘇山噴火への影響
気象庁の青木元・地震津波監視課長は同日夜の記者会見で、「熊本県と大分県で起きている一連の地震活動」と説明した。阿蘇山の噴火活動への影響は見られないという。
阿蘇山への影響はないと考えたいところですが、影響がないとはいえないと真逆のコメントも残されています。専門家によっても意見が分かれているようですね。
火山噴火予知連絡会の副会長を務める九州大学の清水洋教授は、「震源の位置を詳しく解析しないとはっきりしたことは分からないが、きのうまでの地震活動と比べると、阿蘇山のかなり近い場所で規模の大きな地震が発生しているため、火山活動に影響がないとは言いきれない状況にある」と指摘しています。
16日には小規模な噴火も観測されており、関連性については調査中とのことですが、現在は続く余震の影響で、火山性地震の測定も困難だそうです。
熊本地震の影響で、阿蘇山の火山活動の観測に支障が出ていることが18日、文部科学省審議会の地震火山部会で報告された。噴火予知などに使われる火山性微動などのデータが停電などの影響で集められなくなっているという。
余震が落ち着かないことには実際に影響を与えているか調査もままならないのが現状ではないでしょうか。
川内原発と阿蘇山の距離は145kmほど離れており、火砕流が届くほどの噴火であれば九州は壊滅的な被害を受けるほどの災害になりますが、可能性が無いとは言えません。
桜島噴火の可能性
桜島と川内原発の距離はおよそ50kmという目と鼻の先という近さです。桜島が噴火した場合、噴火の規模によっては火砕流が到達する危険性が阿蘇よりも高いと言えます。
今回の熊本での地震がどれくらいの影響を与えるかは不明ですが、2016年2月5日に噴火警戒レベルはレベル3まで引き上げられたばかりです。今回の震源地とは離れていますが、桜島についても警戒レベルが今後上がるようであれば噴火の可能性についても考慮した方がいいでしょう。
川内原発には免震重要棟が無い
九州電力は八月に再稼働した川内(せんだい)原発(鹿児島県)をめぐり、事故が起きた際に対策所を置くとしていた免震重要棟の新設計画を撤回した。
川内原発には新規制基準には反しないものの免震重要棟は建設されていません。代わりとなる建物が設置されましたが、当初の予定3階建てから平屋の建物に変わり、有効活用できないとは言えないまでも十分な広さを確保しているとは言い難いでしょう。
免震棟は福島の第一原発事故の際にも対応拠点として行こう活用され重要性が認知されています。自家発電機や通信設備、被ばく対策設備として重要な拠点となるので、災害時に対処できるような広さが求められています。免震棟のない川内原発は福島第一原発と比べて設備面での安全性も充分とはいえません。
これらを考えると川内原発においては、自然災害のリスクは高まっていると考えるのが妥当と言えます。
川内原発を停止させるデメリット
「よし、危険だから停止しよう!」という意見もわかりますが停止させたら解決するのかと言われるとそうとも言えないのが、原子力発電所の難しいところです。
川内原発の稼働を停止させることによるデメリットについて考えてみたいと思います。
九州内の電力不足
九州内では電力は不足しています。「でも電気も足りてるし、大丈夫じゃないの?」と思われがちですが、無理して間に合わせているという状況なのです。
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0051/6814/data_book_2015_all_l.pdf
川内原発は2015年9月に再稼働したばかり。それ以前はLNG火力、石炭火力、石油火力などの火力発電所などをフル稼働させることで何とか間に合わせてきました。
火力発電所は1970年代に建設されたものが多く、設備の老朽化が進んだ発電施設をフル稼働させるというのは異常な状態です。ギリギリの状況で運用継続し、他の発電所が稼働停止を余儀なくされる事態に陥った場合、南九州が大規模停電を引き起こす可能性があります。
送電線が切れたという一時的な停電程度の問題ではなく、元の発電量が足りていないので、広範囲にわたる大規模な停電など深刻な被害が出ることも予想されます。原発の電力に頼っている状況で原発を止めるということは、大規模停電のリスクを高めるだけなのかもしれません。
復旧作業への影響
九州各地で、電信柱の破損など送電線にトラブルが生じています。20日の午後6時現在でも停電は1.7千戸が停電している状況です。これを復旧させるのは九州電力ですが、川内原発を止めるなどの作業が発生することで電気の復旧に必要な人員を割けないという状況が生まれる可能性が出てきます。
南阿蘇村における被害の状況は深刻で、全国の電力会社からの応援も仰ぎ、発電機車を配置し、順次、電力供給を行っている状況です。
余震が続く中、一日でも早い復旧を目指している状況で、川内原発を停止させたり、不足する電力供給源の確保するとなると、過剰な負担を増やすだけということになります。
川内原発稼働の経済効果
九州電力では、2015年の決算にて、5期ぶりに黒字化しました。この結果は原発再稼働をさせたことによる影響も大きいようです。
http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0051/6814/data_book_2015_all_l.pdf
2011年移行、LNGや石油、石炭などの化石燃料に頼ってきた結果燃料コストは倍以上に膨らんでいました。電気代が高騰せずに済んでいるのは原発再稼働するものとして設定されているからです。
発電に占める原発比率の高い九州電力は、15年7月以降、川内・玄海原子力発電所が順次再稼働するものとして料金を設定しています。
燃料費の高い火力発電など従来の発電に頼ることは、節電の義務化や電力コストの増加を引き起こし、地域経済を圧迫し復興を遅らせることに他なりません。
これらを総合的に判断するとなると、原発を一概に止めるべきとは言えないでしょう。原発を止めるのも、再稼働させるのもボタン一つで簡単に出来るというわけではありません。そして、原発を停止させたらリスクがゼロになるというものでもありません。
ですが、余震も続いている中で、原発が稼働している状況というのは、現地の方にとってストレスになっていることも事実です。
安心の為に更なるリスクを抱えるのか、許容できるリスクとして稼働を続けるのか、慎重な判断が求められているのではないでしょうか。